読書

心理描写がすごい:罪と罰

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ハードルの高さ

ドストエフスキー『罪と罰』を二(三?)週間かけて読んだ。長い戦いであった・・・。

まず、非常に読みづらい。最初から惹きつけるとはいいづらいところがある。
ドストエフスキーは初めて読み、そもそもロシア文学が初めてなので。
主語が何かわからなくなるような冗長な文章(後になってそれがいいと思えるようになるのだが)、同じ人物で名前がころころ変わる(主人公の名前はロジオン・ロマーヌイチ・ラスコーリニコフで、人物によって違う呼び方をする、そして短くしたロージャという読み方をすることもある)、そもそも名前が長くなじみがないので覚えづらい、似たような名前が多い(ラスコーリニコフ、レベジャートニコフとか)。

以上の理由でハードルは高かった。
しかし連続して同じ難しさでもない。
思い出してみると、上巻の進みはおそかったが下巻はたったの3日で読んだ。バイトとかいろいろあったものの。
物事は最初がきついということですね。
ホントに序盤、中盤の前半は眠くなった・・・。
特に登場人物がけっこう多くなってくるので。

しかし後半は人物関係もわかるようになり、思想・心理面でのおもしろい部分が非常に多くて読み進めやすい。驚く所がとても多かった。

名作ってすげえ

読み終えたことによる達成感があるものの、淋しい感じのほうが大きい。
以前からそうだった。喪失感といってもいいかもしれない。
感動もそうだが、後により大きくなるのは喪失感だ。
一つの世界が完結してもうこれ以上展開することはないのだという悲しみ。
連日楽しみに部屋へ戻り、していた習慣が喪失するということ。
現実に引き戻され、このような本のなかのような劇的な出来事が起こらないかと夢想するが、現実は退屈で習慣的で毎日同じことを繰り返しているにすぎない。かといってその習慣性を捨てることもできない。
事実は小説よりも奇なりなんてウソで、つよがりにすぎない。
と思うものの、やはり自信がもてず自分の努力の結果であるという結論に達するのであった・・・。
↑の感じ!
名作たるゆえんは、こういう自分に共通する挫折・屈折のしかた、周りを疑いながら、結局自分自身に問題があるとするところにうすうす気づくというところに着地するところにある(と思う)!
どこかで読んだが、時代を超えて愛される名作は、時代・場所を超えて共通するものを持っているという。
自分が個人的に、自分だけ感じているだろうと思っていた、自分でも言語化できていない心理をえぐりだすような作品だ。
長く、一見して退屈な物語で描き出されるのはそうした心理だ。
出来事そのものはどうでもよろしい。そこに描かれる心理が、名作たらしめているのだと思う。
直接見えないものに、ある角度からコントロールされた強弱をもって照らしたときに現れる一瞬の影を、形に、立体にしていく・・・。そんな感じなのかもしれない。

具体的に

話が抽象的で、自分でも後でナニ言ってんのかわからなくなりそうだ。
共感:ラスコーリニコフの思想の転換のしかた、驚き。焦り、自分がしらみだと感じてはいながら、それを否定するためにこねくり回す感じ。

ナスターシャ

偉そうなことを言うのはよそう。
誰でも思うことだろうし(書いてるけど)。

それより読書中オレのずっと思ってたことを書く。
ナスターシャである。
メイド服で若い女の子を想像していたが、年齢の描写あったっけ(今ググったら、あるみたいだけど)?
話す内容的に若そうだったが、うん、欲望かもしれない。
ラスコーリニコフが病気で寝ている時に、尋ねて来る人の話を一緒に聞いていたりしたのがおもしろかった。なんでいるんだよと。
いつも寝てばかりいて!と怒ったりするのも、ラスコーリニコフと近い関係にあるということで、どう展開するのか楽しみだったが、ゼンゼン本筋には関与せずラスコーリニコフとの関係は変化せずだ。
ナスターシャは割と気にかけていることが多かった気がするが、ラスコーリニコフはゼンゼン気にかけていない。
展開的にちょっと残念な気もした(そういうのはほかの作品で楽しめ)・・・。

心理描写

また、驚いたのは犯罪の心理描写の細かさだ。
疑心暗鬼の感じに、すっかりとりこまれた。
現実か疑心暗鬼か客観的に見れず、区別がつかない状況がすごいドキドキした。
オレが犯罪したとしてこれから逃れられる気がしねえ・・・。
だから犯罪やるとしたら逮捕を覚悟の↑でってことになるでしょうね(危ない)。
まあそんな事情が未来で絶対ないとはいえないので。

句点がなく非常に長い文で読みづらいけど、それがピンとくるようになってからがおもしろい作品でした。

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