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世代観から見る『冷たい熱帯魚』

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あらすじ

熱帯魚店を営む社本は、妻と娘とともに暮らしていた。
だが前妻が亡くなった後すぐ結婚したため娘はグレて、家庭は崩壊寸前。

あるとき、偶然に大熱帯魚店アマゾンゴールドの店主である村上と出会ってしまったことで、残虐な事件に巻き込まれてしまう・・・。

世代間の違いを表している

見ていて、この映画は世代間ギャップをうまく表していると思いました。

大きな熱帯魚店アマゾンゴールドの店主村上は60歳代くらいで、強引で口がうまく、ズケズケと入り込んでくる感じがいかにも団塊世代です。
親しく話していて急にキレるようになるのがリアル。こんな人いますよね・・・。
当然悪いことばかりでもなく、リーダーシップもやる気も、サービス精神もあり捉え方次第ですが、根底にあるのは自分本位なんですよね。

一方小さな社本熱帯魚店を経営する社本は、家庭でも娘の言うことに強く言えなかったり、村上に言うがままにされたりと、うだつの上がらない男でした。
この人はその自信のなさ、度胸のなさ、身の丈にあった欲望から、就職氷河期世代としましょう。

2つの世代で多く見られる違いは、父権の強弱でもあります。
強いリーダーシップで家族(会社)のなかで父親が大きな役割を持つか否か、ということですが、対照的です。
村上はときに暴力をちらつかせながらもリーダーシップを持ち、会社をまとめあげ、一応尊敬されていそうです。

一方社本は、妻の手抜き料理に何も言えず、グレた娘に何も言えないでいます。
ここまでくると彼の性格に問題があるのであって、世代的なものに喩えるのは多少無理がある気もしますが、父権を感じません。

メガネを取り豹変した社本を最後に待っていたもの

しかし終盤、社本は豹変します。
今までの気弱さから一転、暴力的ながらも家族に対してしっかりと言いたいことを言うようになります。
妻に飯を作らせ無理やり迫り、グレている娘に対しても、力でねじ伏せてチャラ男?と遊びに行くのを阻止。

自信を持ったように見えます。

そして最後には妻を殺すことで、自分なりの父の務めを果たしたのです。
しかし・・・娘の以外な反応。

村上を克服し、やっとの思いで獲得した父権は、いともカンタンに下の世代の娘によって打ち砕かれたのでした。
「そんなのもう古いんだよ。」という感じでした。

上の世代の父権・強権を目撃し、憧れてきましたが、下の世代の娘は全く理解することができず、さらに軽蔑を強め、絶望感!板挟み!といったところでしょうか。

ハラハラドキドキ、ゾクゾク、面白い映画でした。

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