食は単なる生命維持以上の意味を持っている。
美味しい食事を食べるだけで人は幸福になれる。
コミュニケーションの場にもなることもあり、場所とモノによってはコミュニケーションの質が変わることもある。
『村上龍料理小説集』はその名の通り料理をテーマにした短編小説集である。
究極の食レポシリーズ(勝手に命名)で、ストーリーと料理が密接に関連している。
味が状況を象徴したり、その逆もある。
似たようなテーマの作品に『ワイン一杯だけの真実』がある。
タイトルは特になく、「Subject 1」で、32編収録している。
料理の可能性を探った作品。
個々の料理はよくわからない
テーマの料理が何か最初にわからないこと(最後にチョロっと出るだけのときもある)や、馴染みのない食が多いことや、私の食への興味のなさもあって、正直あまり内容を思い出せない。
食べた経験があってわかる〜となるのであって、食べたことのない人間に伝わるものではない気がする。
大事なのはストーリー
個々の料理の描写はよくわからなくても、全体としての主張は理解できる。
ある場面や物語で、高級な食事が必要になり、より思い出深いものとして引き立てるということだ。
物語の中で食に語らせるという手法は『はじめての夜 二度目の夜 最後の夜』などでも用いられ、きれいだった。
高級な料理をまず食ってみたい、と思うには十分だった。
個人的に、テレビで高級食材を見ていてもおいしそうとは思うものの、特に興味はそそられない。
大事なのは物語であり、物語を支えるためには雰囲気や、高級な料理が必要だが、それが伝わってこないのが理由だと思う。
テレビの食レポからは、映像以上のものが伝わってきたことがない。新鮮だった。