村上龍 読書

味覚・香りを人間関係に例える究極の食レポ…『ワイン一杯だけの真実』

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あらすじ

オーパス・ワン、シャトー・マルゴーなど、いくつかの高級ワインをテーマにした、短編小説集。
『2days 4girl』ライクな雰囲気で、つまり、高級で洗練されたダーティーさ、寂しさを抱えた男女の世界で、それぞれのワインが描かれる。

究極の食レポ

この小説の目的ははっきりしている。ワインだ。
よって描かれる人間関係はワイン以外に特に意味がない、と思う。
味や香り的にこういう状況だよね、みたいなのを描写している、シチュエーションと合うというより、味そのものを人間関係に喩えている。

味や香りは、当然言葉で100%伝えることができないわけだが、技術と知識があればこうやって表現することもできる、ということは驚きだった。
もっとも、シチュエーションがふつうではないのでイメージはできても理解はできないわけだが、伝わる人もいるだろう。

テレビの「食レポ」も、味を伝えるという目的があるのは同じだ。柔らかい、甘〜い、ジューシー、サクサク、…
味覚に関するいろんな言葉を組み合わせる。
よって、味覚という枠から離れることはできない。

あくまで想像の範囲内の味になり、そうやって伝える限り、おいしさというものはいかに単純なものか、と思ってしまう。

週刊誌で見たが化学調味料や添加物で、現代人の味覚は退化していっているらしい。
が、どうなんだろう、画一的な表現、言葉から退化していっている気がしないでもない。

絶対にありえないが、日本人全員がこの小説みたく、味を表現するような物語を構築できるようになれば、味覚のカンブリア爆発が生まれるかもしれない。

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