生きてるなかで、なぜだかとても気持ちがいい、すがすがしいシチュエーションに遭遇することがある。
サウナをじっくり楽しんだあと温泉から上がって、やや暑く汗をかいているときに、帰り道に川沿いの道を歩いて涼風を感じたときなんかそう思う。
いつでも感じるわけでなく、外気温と風速と風景に条件があって、それで何かを思い出す感覚がある。
単に汗が冷えて気持ちがいいということでもなくて、精神的、記憶に由来する部分が大きい気がする。
その感情を他人に正確に伝えるのはむずかしい。
一般性がないのは特定のシチュエーションで感じる記憶のどこかとリンクした感情だからかもしれない。
村上龍『白鳥』は、短編でそういう感情を伝える作品である。
あらすじ
9編からなる、短編小説集。
出会いを通じて人が微妙に影響を受け、いい予感を感じる様子を描いている。
特徴
場所や日本だったり海外だったり、主人公の属性が全く違ったりで、編によって目まぐるしく変化する。
エンドはあっさりとしたもので、編を通じてそれぞれが個人的で微妙なニュアンスを伝えるので、何を言いたいのかはよくわからなかった。
共通しているのは主人公たちは何かを見つけていい気分になった、ということ。