村上龍 読書

『5分後の世界』ゲーム版がひどすぎる出来だった

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『5分後の世界』は村上龍作品のなかで唯一ゲーム化(PS2)された小説である。
小説は「小田桐」が箱根山中で「5分後の世界」に迷いこみ、そこでは日本が第二次世界大戦で降伏せず地下で戦争を続けていた…という話。
2個の原爆投下後の無条件降伏をしなかったシナリオは戦勝国の実際の統治計画に基づいていて、さらに何発かの原爆、九州上陸戦、本土戦…、そして最終的に日本の本土は分割統治されている。
日本軍は長大な地下トンネルを掘り20万人の人口に激減させながらも、戦いを続ける。

ゲームは世界観とごく一部の人物は共通しているが、ほかは全く異なる。
時系列的には、小説『5分後の世界』→小説『ヒュウガ・ウイルス』(5分後の世界Ⅱ)→ゲーム『5分後の世界』
で、けっこう前の作品の話が出るので未読だときついかもしれない。
ゲームシステム的には7人の各キャラクターの行動が相互に影響しあいエンディングが決まるというシステム。
サウンドノベルの中でもかなりややこしいシステムで、セリフ飛ばしもないのですべて見ようとすると膨大な時間を必要とする。

最高傑作と言われる作品のリアリティのある設定を借りたゲームなので、そこそこ期待はできるが…。

ゲーム版は明らかな劣化で、ゲーム単体としてもひどい作品だった。
もしゲームから先にプレイしていたら、原作にはまったく興味を示さなかっただろう。
何がひどいゲームなのか?ということを、いくつか説明していきたい。

原作と比べて何が劣化なのか?

原作の魅力は、史実に基づいたリアリティのある設定、映像を目の前で見ているようなすさまじい迫力の戦闘描写と、社会批判であった。
このゲームは設定以外ぶち壊しにしていて、原作の面影は一切ない。
なぜそう言えるのか?を説明していく。

戦闘描写に全く迫力がない、状況がつかめない

原作の戦闘描写は目の前に映像や雰囲気、におい、音が立ち現れるような圧倒的迫力があった。
シナリオライターは村上龍ではないのでそれよりランクが落ちるのは仕方ないのだが、状況が全くイメージできないひどい文章だった。
状況を把握できない戦闘シーンは実際の戦場とは別の意味で悲惨だ。

何が言いたいのかよくわからないシナリオ

何がいいたいのか全然わからないシナリオだった。
攻略サイトが存在せず情報に乏しいが、進捗バーがえ?というところで進まなくなり、話は終わってしまった…。
最初の主人公「サカキ」のシナリオの要約…
5分後の世界に迷い込み、森の中にいたところをヘリに撃たれる。
なんとか逃げ、日本兵と遭遇し生き抜いてアンダーグラウンド本部に辿りつき、ただ暮らしてるのも暇なので訓練に参加し、兵士になって橋を落とす作戦に出る…。

異常につまらなかった。
設定を借りて5分後ワールドを楽しむためのものでしかない。
設定以上のことは何もやっておらず、主張もメッセージもなく完全に縛られている、と言える。
リメイクも大変ですね…。

原作以外の社会批判はない

原作のように地下日本を描くことで現代日本社会批判をすることはない。
単に世界でどのように暮らしているかを描写しているかだけだ。
やはり設定を借りているだけで、作品の性質はまったく異なる。

ゲーム的によくない部分

プロの作家の最高傑作の文章と比較してよくないのはまあ当然かもしれない。
しかし、ゲーム単体として見てもいいものとは思えない部分が多々あった。

既読スキップができない(早送りのみ)

分岐が重要で、繰り返しプレイが前提となっている筈なのに既読のスキップはできず早送りだけだ。

分岐が多すぎ、ややこしい

分岐が多すぎて、すべて把握するのは不可能に思う。
そしてスキップはできない(上)。

立ち絵の画質が悪すぎる

立ち絵はPS2とは思えない3Dポリゴンで表現されていて低画質で、ひどい出来だと思った。

ミニゲームが意味不明

ワクの中でタイミングよくボタンを押す謎のミニゲームがけっこう挿入される。
ミスるとまたシナリオやり直し(スキップ不可)なのでストレスが溜まりまくっていく。
必要ないだろ…。

読みづらいフォント

キャラによってフォントや地の文が変わる。
フォントのなかには、画質の悪さでものすごく読みづらいものがある。
たとえば「ヤエガシ」のシナリオは明朝体だが、字がつぶれまくって読めたものではない。

文章表現のなさを理解していてフォントで補おうとしたのだろうが、見苦しいものだ…。

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