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さまざまな解釈を許す懐の広さ!戦中モノ『この世界の片隅に』

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世の中にはいろんな種類の戦争モノの作品がありますが、特に日本の太平洋戦争を描いたものには、悲惨で暗鬱なものが多いです。

『火垂るの墓』や『はだしのゲン』など、見ていると暗い気分になりますよね。
敗戦するという結論は決まっているため、当たり前っちゃ当たり前なのですが。

結論をわかっていながらも見てしまうのは、一種の様式美というか、怖いもの・暗いものみたさ、平和っていいな!を感じたいがためでしょうか。

上にあげた2つの作品は、これでもかというほど同情を誘ってきます。
主人公が幼いからでしょうか、とくに戦争ってこんなに悲惨なんだよ、ということを訴えてくると思います。

・・・ですが、怒涛の暗さは作りもの臭くてウザく感じます。
ここ泣くところだぞ、的な。徹底して悲惨な目に合わせればいい的な。

書いてて気づきましたが、子供の目線から悲惨さを強調する作品ばかりだったからかもしれません。
全体像が把握できていなかったのです。
把握できていると、ああ、たくさんある戦中の物語の1エピソードに過ぎないんだな、と思いますが、知らないと、これがみんなに降りかかるような印象を受けるのです。

映画『この世界の片隅に』は18歳で呉に嫁いだすずが、生き抜く様を描いた作品です。
この作品は懐の広さ、観る人の解釈を許すような印象を受けました。

懐の広さ・戦争の全体像を感じさせる要素は2つあります。
ひとつは敵からの目線。
爆弾が落とされるシーンでは、上空から精細に呉の街が描かれていまして、それから美しい街が破壊される、という風になっています。

飛行機から投下されるリアルな爆弾、洋上に停泊している日本側の戦艦、海に外れて落ちる爆弾。
日本側からすれば投下される爆弾なんて見えないわけですし、誰もいない海中に外れた爆弾なんて見ていません。

つまり敵からの目線なのです。

もうひとつは笑い。
食料がなく、絶望的な状況でも、日本人全員が継続的に悲惨な思いをしていたとは思いません。
なんとか生き抜こうとして様々な努力をしていて笑いが起こったこともあるはずです。

ある場面で、工夫の結果ぜんぜんダメな料理になった、というときにみんなで美味しくないと言いながら笑って食べていたのが印象的です。

以上の2つで、私は作品の持つ懐の広さを感じました。
太平洋戦争の日本を描いたすべての映画が徹底的に悲惨でなければならないとは思いません。

当然、破壊され、殺されたのは事実ではありますからそこは受け止めないといけませんが、それを乗り越えたのも事実です。

また、のん(能年玲奈)に関しても、素晴らしいと思いました。
最初見始めたころは本人まんまじゃん!どーしようかなー観るのやめようかなーと思っていたのですが(別に嫌いなわけではないですが、あまりにも本人まんまだったので)、それは次第になれていきました。

そして後半での悲痛な叫び、悲哀に満ちた声色の使い分けは、やっぱ女優ってすげーな、と。
最初だけで判断しちゃいけないですね。

従来の同情・お涙頂戴の戦争作品とは一線を画したアニメ映画作品、『この世界の片隅に』の紹介でした。

(連ドラになるようですね。のんを巡って色々ウワサがあるようですが、実写化が楽しみです。)

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