あらすじ
『共生虫ドットコム』は、共生虫という妄想にとらわれた引きこもり少年が主人公の小説『共生虫』のファンサイト「共生虫ドットコム」の全記録と、作品にまつわる専門家との対談をまとめた一冊である。
CDが付属していて、小説内のインターネットを体験できる。
時代
小説で読んだときから、PHSで接続だのといったインターネットの描写だけは時代を感じていた。
CDや、本の中で再現されたインターネットのスクリーンショット的で実際見ると、古臭さ、胡散臭さがすごい。
まだ海のものとも山のものとも知れないが、なんとなくすごいものになるかもしれない、コミュケーションを変える革命になるかもしれない〜などなど、古めの時代を感じる、それが小説を読むための、時代の前提としてある。
まだ幼いときというか、小学生くらいのときはそうした怪しさとチープさは残っていて、地味だった記憶がある。
でも、画像を読み込むのに何秒かかかる、まではいかないくらいだった。
あるときからインターネットは画面的に、急速に綺麗になった気がする。
それからSNSとか出てきて普及して、怪しさが消えていった。
今赤ちゃんの人が大人になって、この小説読んでも??となると思う。
もちろんテーマとかそうしたものは普遍的だから通じるが、前提がわからないので理解できないところが多いと思う。
インターネットの変化は、普遍性の対極にある。
現代は変化が多く、変化していかないと生き残れない時代だという。
が、それはITや技術関係に限った話であって、人間や文化の変化は限りなく遅い、すでに成熟している。
カラーテレビが家にやってきて、マイカーを買って、近くに橋ができた!国民的歌手が生まれた、みたいなのは、人間の生活の変化としては今以上に大きい気がする。
注目され、変化の時代だとことさら強調されるのは、人間が追いつく側て、個人の生活にマイナスに作用する可能性があるからかもしれない。
毒ガスの専門家、嶋田将司が異色すぎる
収録された対談には、毒ガスの専門家、嶋田将司という人が登場するが、この人が異色すぎて面白い。
米軍で化学戦部隊に配属され、その化学戦の経験を活かして専門家になったらしいのだが、米軍に入った理由は留学中に書類にサインをしてしまったからとのこと。
根回しし、横田基地の偉い人に呼び出されたりもしたのだが、結局無理だったらしい。
でもすぐに入隊せず、結局何年か無視していたらしいのだが、結局逃げられず入隊、という…。
結局化学戦の専門家になるのだから、人生わからない。
ネット検索するとほとんど情報は出てこない、当然Wikipediaなどもない、謎の人物。
化学のことよりも、異色すぎる経歴が気になってしまった。
まとめ
理由はよくわからないが、全体として、あまり面白くない。
ある作品の舞台を再現して、それにまつわる対談をまとめて、一般読者のアンケートをまとめたりしていて、そういう一連の企画は面白いと思ったのだが。
リアルタイムで見ることに意味があるのかもしれない。
あのときリアルタイムのときはハマっていたのに、何年か経ってからみるとなんであんなのに…ということはよくある。
それが時代かもしれない、「今」を共有していることは意味がある。
インターネット描写にはちょっと古臭さを感じるものの、小説世界をインターネットで再現するのは今でも流行りそうなメディアミックスだ。
ここまで手が込んだメディアミックスを、リアルタイムで体験してみたい、楽しそう。