村上龍 読書

バブル荒ぶるエッセイ集―『龍言飛語』

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あらすじ

1989〜91年にかけて『週刊プレイボーイ』(以下週プレ)で連載されたエッセイを再構築したもの。

特徴

読者層が若く、全体的にくだけた雰囲気の週プレだからか、口調が「〜だけどね」とか親戚のおじさん風なのが最大の特徴で、内容がかなり荒ぶっている。
痛烈で致命的な呆れを感じさせる日本批判だったり、苛立ちをぶつけたり、よくわからないまま結論づけたり。

初期のエッセイ集はこんな感じなのが多い、次第に一人称が「私」になり、内容も落ち着いていくのだが、このエッセイ集は初期の感じに近い感じがする。

書かれた時期的にバブルの浮かれた様子を客観的に批判している様子が多く、全く踊らされていない、なので完全な一貫性がある。
こんなのは続かない、と断言していたり土地転がしの無意味さをバブル中に指摘しているのはさすがだと思った。

若い男への生き方への言及が多い!

掲載雑誌と当時まだ30代後半ということもあってか、若い男の生き方の言及が多く、参考になる。
村上が年を取るにつれて若者に対する言及は減っていく、もう自分が若くないし興味がないし文化を知らないから、という理由でしなくなったようだ。
そういう若い男に生き方を説く老人や大人はウザいという理念?を忠実に実行しているように見える。

たいていはイライラと共にぶつけているのでぶっきらぼうだが、ほかのエッセイではほとんど見られない若者へのメッセージは貴重だ。

一流の人間と比較してどうするか考え、それでも一歩でも近づくため努力する、とか男は「何がフェラーリだ、ばかやろう」というのを持っていないと生きていけない、…とか。

同時期に書いている小説のヒントとなったような疑問、出来事についても言及していた。
明らかなだったものは『5分後の世界』と『イビサ』。

『5分後の世界』の元となったもの?は共産ゲリラと日本の降伏についての疑問を書いていて、『イビサ』は小説内で見られる海外の描写や街、高級パーティーが共通しているところが多い。

2つとも全く違うテーマの作品であるが、ほぼ同時期に書かれ、海外性が大きいのが共通している。
『5分後の世界』は特に素晴らしい作品だと思う、少しでも違う角度で作品の種、あるいは芽くらいのものを見られるのは面白い。

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