村上龍 読書

ディストピアな100年後の日本『歌うクジラ』

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村上龍の小説では珍しい遠未来SF作品の感想。

あらすじ

格差社会が極限まで進んだ100年後の日本での、少年の旅を描く。
社会は一見高度に平和と安定を維持しているように見えるが、人々は管理され、活力を失い、ディストピアの様相を見せている。

感想

作品内のディストピアな雰囲気が、文面から滲み出してくるような、活力のなさ、希望のなさが印象的だった。
特に絶望を決定的なものにしたのは、言葉だ。

主人公を除く登場人物のほとんどは、言葉遣いが現代日本のものとは異なった。
敬語を使える人はごく僅かで、反乱移民の子孫たちは副詞をでたらめに使い、地域によって変な言い回しを多用する人々。
階級間の移動・コミュニケーションのない、究極の格差社会の行き着く先は、言葉の断絶だ。

また断絶の手段として、物流の断絶、というのはいかにもリアリティがあった。
究極の技術、断絶に至るようになった理念、結果的にディストピアになってしまった方法、社会は実にうまく描写されていた。
主人公の個人的な冒険より、描かれた社会のほうが気になって仕方なかった。

…正直言って、終盤以外あまり面白くなかった。
何かの象徴的な奇妙な人々と、奇怪なことを延々としていた印象だ。
社会のリアリティの割に、登場人物にリアリティがなかった、かもしれない。

 

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