村上龍 読書

好きなことを仕事にするのは強力なリスクヘッジになる

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村上龍『シールド(盾)』における「盾」とは、柔らかい自分の心を守るもので、それは会社だったり、スポーツだったり、体の強さだったり、専門知識だったり、何にワクワクするか知っていることだったりする。
盾とは何か、いかに獲得するのか、リスクとは何か、守ってくれるのか、「キジマ」と「コジマ」の対照的な人生から端的に描く寓話である。

キジマとコジマ

キジマとコジマはなぜか同作者『テニスボーイの憂鬱』にも登場する人名の組み合わせだが、設定等に全く関連性はない。
似た名前のほうが対比が効くので二人の名前は似ているのだろうと思う。
実際、お笑い芸人アンジャッシュ小嶋一哉のネタは、違う名前で呼ばれて「小嶋だよ!」と叫ぶのがあるように、〜シマ(ジマ)の人は名前を間違われやすいということがある(体験談)。

カタカナで似ていてどっちかわからなくなるので、一応どっちかというのを書いておこう、キジマは反逆的なほうで体育会系、車会社に入って気付いたら時代の流れに取り残されていた人、コジマは先生などの言うことをよく聞く人間だったが高校に適応できずドロップアウト、仕方なく犬の仕事をしたら思いがけず自分に合ってたという人。

好きなことをやることはリスクヘッジになる

好きなことを仕事にするというのは、強力なリスクヘッジになる。
変化の大きい時代で、リスクヘッジがどのように機能するかを解説している。
好きなので苦にならないということは、努力を努力と思わない結果としてスキル蓄積(長時間+吸収率の高さ)、幸福感につながる。
スキルと幸福感があれば収入、外部環境が厳しくても耐えられるし、悪い現状を打開する力さえも持っているかもしれない。

一方たいして好きではなく、たとえば収入に惹かれている状態だったらどうだろうか。
スキルの蓄積は悪く、幸福感にもつながらないが、収入があるからいいという状況。
狩猟時代や、現代でも傭兵なら食っていけなさそうだがそれでも食っていけるのは、会社に依存しているからとも言える。
変化が大きい時代であり、市場はすぐ変化し、会社も岐路に立つ。
人件費が削減されるなど悪い状況になったとき耐えることができず、かといってほかの職に就けるスキルがあるわけでもない、という状況になる。

高度経済成長期は、作れば売れた(らしい)。モノがないので当然とも言える。
苦労して好きなことを見つけなくても収入は保証されたので別に好きでなくても、会社の言いなりになればよかったのだが、今はそうではない。
興隆を誇った天下の大企業だって外国企業に買収されたりする時代、リストラなんてふつうにある。
そもそもリストラされない人材になるのが一番だが、ヘッジするに越したことはない。

『13歳のハローワーク』の補完

『13歳のハローワーク』(以降13歳)では上でいったような好きで選ぶメリットがあるので、世にある職業を「好き」から紹介していたわけだが、なぜ「好き」で選ぶのか?という部分がやや言葉足らずだった印象はある。
『盾』はなぜ好きな仕事をしたほうがいいのか?を補完している。

「13歳」は、フリーターの若者の言い訳としても使われている面があるらしく、その勘違いを正す意味もあるかもしれない。
『盾』から「13歳」を解釈すると、好きな仕事のほうがいいというのはただ生きのびるためのリスクを減らせるからで、何もしないよりは好きではない仕事でもやったほうがいい、ということになる。

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