同じ言葉でも、言う人によって感動の度合いが違う。
30代でバイトしたことないフリーターは何を言っても負けごとと言い訳であるが(たいてい事実)、極貧から叩き上げでトップに上り詰めた社長の言葉は重く感動を与える。
なにを言うか以上に、その人がどのような人物で、どのような過去を背負っているのかを知っていないと理解できないことがある。
一見地味な、ふつうの日常的なことばのように見えるが、過去の経験を見るとじつは深い教訓や意味があったりする。
そういうドヤッとしない、歴史的経験が含まれた言葉を金言と呼ぶ(名言ではない)。
『カンブリア宮殿 村上龍×経済人 スゴい社長の金言』
はそういうニュアンスの金言を集めた本だ。
インタビュー内では飾らないことばだが、彼らのたどってきたサバイバルの足跡を見ると、重い言葉になる。
49人分の文脈がよくわからない
スゴい社長・リーダーである49人は4つの視点で分類されている。
1.「勝ち組」企業の条件
2.リーマン・ショック後の世界
3.震災を乗り越えて
4.新しい企業の形
例によってインタビュー内の一部、重要な箇所が抜き出されている。
人数は49人で、ページ数は228ページなので一人あたりだいたい4ページくらいになる。
重要な部分だけ4ページ分抜き出されたインタビューは、文脈がよくわからないのでピンと来ない。
金言は解説が必要たと思う
感動を与える言葉には種類があると思う。
解説が必要な普通のことばに見えるものと、解説がいらない普遍性とインパクトがあるものの2つだ。
この本に紹介されている名言の多くは普遍性のある名言ではなく、だいたい普通の文章に見える、「金言」(インタビューなのでそういうものだと思う)。
状況や境遇で重みを持ってくるタイプだ。
だが文章には解説はなく、抜き出されているだけだ。
会社ごとで短い要約が付いているが、企業に詳しい人ならまだしもそれでわかる人はいないと思う。当然感動も教訓を得ることもない。
…この本は番組を見たことのある人や、書籍のカンブリアを読んだ人向けなのかもしれない。
考えてみれば、見たことのないTV番組の名前がついた本を買うことはあまりイメージできない。
ファンといえるくらい毎週見てるなら、買うのはわかる。
ファングッズのようなものだ。
ということで、一度見たり読んだりにはおすすめかもしれないが、初見の人にはあまりおすすめしない。