あらすじ
「普通」のおじさん、女子高生といっても漠然としたイメージしかなく、日本はすでに一様ではないにも関わらず、明確に意識されることは少ない。
「成功者」の定義も、従来の意味とは異なってきている。
建築家、科学者、国連関係者、スポーツ選手…社会で大きな役割を占める職業の中でも特に功績のある一流の人物に、成功者の条件は何かと、村上龍がインタビューするという内容。
多くの村上作品で見られる主張のひとつ、再優先事項を明確に
自分の中の目的や最優先事項を明確にしなければ何もできない―は、いくつかのインタビューの中で共通して出てきた表現だった。
村上作品で頻繁に出てくるキーワードでもある。
主張を物語だけでなく、客観的に語らせ補強する、この本自体がそういう明確な目的の元に作られている。
途中のアンケートがリアル
章の間には、一般の人の、成功者の条件の回答が掲載されている。
30代男、会社員、年収〜万円以上。のような感じだ。
20代、30代、…と世代ごとにまとまっていて、??となるのだが、読み進めていくと年代ごとで明らかに違いがあって面白い(抽出・編集のせいも当然あるのだろうが)。
具体的にいうと、20代は具体的な経済力や、自由に人生を決める、後悔しない、ということが目標として置かれることが多い。
が、30代、40代ではもっとささやかで多様化して、え、そんなのが??というものが多くなる。
自分が惨めにならないためだろ、というものや、なんか偉そうだな、というものが増える。
アンケートというより、それぞれが私は成功者だ、と主張しているように思う。
基本的に年代が上の方が欲望がある、と思っていたのだが、差し迫った現実には勝てない。
現実は変わらないので、認識のほうを変えているということがよくわかる。
それでなくても、30代〜40代は何か表現したくなるのか、個人的でひねくれた珍回答が多かった。
多くは成功者の間口が広すぎる。誰でもできたらその成功者の区分けは間違っている。
意図が理解できないのも少なくなかった。
現実と理想のギャップに混乱し埋めようとしているのか、表現する言葉を持っていないのかはわからない。
掲載アンケートで最も高い年代の50代はさすがに年の功か、いい回答が多い。
回答のほかに文章力や表現力の問題かもしれない、「ささやかな幸せ系」にしても、誰でも入るわけではない、うまい条件、を付けているのが多かった。
死んだ時に〜と思えるか、周囲の人間が〜、…など、死に関するものが多く、比較的イメージしやすかったというのもあるかもしれない(死について理解できているわけではない、イメージできるかの話)。
中田英寿のとき喋りすぎてて笑う
最終章は中田英寿へのインタビューだったのだが、ほとんど村上が話しているので笑ってしまった。
彼らが友人だからだが、それにしてもあんまりな比率だったような気がする。
他のインタビューはほとんど聞きに回っていたので、違いがよくわかる。
インタビューとは別枠にしたほうがいいと思った。