村上龍 読書

没落する社会で生きる方法―『恋愛の格差』

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あらすじ

恋愛を主なテーマに、社会、文化、歴史を幅広く扱ったエッセイ集。

社会科学的に、恋愛の前提、ルールが変化していることを説く。

最初の「はじめに」の言葉を借りると、この本は”現代日本の「格差を伴った多様性」の中での、恋愛の可能性”について書かれている。
ふつうの恋愛的な話例えば村上龍の体験に基づいたモテる女いい女、などの話にはならない。

恋愛や結婚には経済力や、自立していることが必要になるがそもそもそれを満たす男は少なくなっている。
社会経済レベルで、いかに結婚や恋愛の前提が変化していて、必要性が消えデメリットが強調され、過去の「普通の~(結婚、生活、パートナー…)」に代表される、何も考える必要なくうまくいくのが難しくなっているかを説明している。

例えばパラサイト・シングルやフリーターに結婚は難しいが、なぜ発生するのか、豊かさからの発生の必然性ということを書いている。
基本的に現象についてニュートラルに説明し、それがいいこととも悪いことと言っていない、どうしていくべきか、も当然提示しない。
万人に解法が当てはまる時代は終わり、それらは各個人の問題として解決していくものだからだ。
一方で、発生するメカニズムはある程度共通していて、まず普通というのが難しいという認識をすることが必要だ。

いつの間にか明治時代の徴兵制とか、話がとんでもない方向に行くこともあるが、基本的にどれもうまく例えたり説明するためのもので、ちなみに徴兵制などは今で言う普通が、いかに最近作られた概念なのかを説明している、そこらへんの比喩や柔軟さはさすが小説家、脱線しまくってもちゃんと意味があって、面白い。

同じような趣旨のエッセイに『誰にでもできる恋愛』がある。
タイトルの意味は誰にでもできる恋愛は存在しない(しなくなった)、ということだった。

基本的な生き方が確定していない

書いてあることを強引にまとめると、恋愛とか結婚には、お互いに、依存しないような相手との関係、信頼を築くことを知っていること、社会の変化を認識していること、経済力やコミュニケーションできることが必要だが、年収UPは望めず、依存しあう関係がよしとされた時代はあったが名残だけが残り離婚率は増え、世間は機能せず、暇つぶし文化にどっぷり浸かって考えないような人間が多い。

男は経済的優位に甘えた状況が続いていたが、その優位が消えてあたふたしている、そもそも引きこもりやフリーターが多くなって歯にもかからない。

解決するには…、各自正攻法で経済力を持ち人間的に自立した人間になるか、結婚に縛られない、より大きな楽しみを見つけるしかない?

暇つぶし文化(爆)が流行るのは、当然…!

恋愛や結婚で起きている、変化についていけないことは、問題のひとつに過ぎない。
変化そのものは悪いことではないが、変化に無自覚な人間が大多数を占める。

歴史的に興隆した国家に没落がつきもののように、国家サイクル的に当然、だとも言っている。
経済が疲弊し、文化が疲弊し、不安が増大し、ダイエット、ブランド、ファッション、バラエティ、コミック、テレビゲーム、カラオケなどの浅薄な暇つぶし文化が流行るという指摘は、強烈だ。

それらの文化は辛い現実を忘れさせてくれる。

ゲームやカラオケはよくするが、心から楽しんだことがない。
その割に、よくしているのだが。
人口の多さの割に熱狂する人は少ない、ネット上ではすごいプレイ集のようなものが再生回数を集めているが身の回りにはいない。

なぜかはわからなかった。

私や多くの人にとって現実逃避に過ぎないからだ。

考えるのは辛い。
それでもどう生きていくか、考えていかないといけない…。

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