映画

偉大な天才数学者も、社会性から自由にはなれない

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現代の便利生活を支える魔法、コンピュータ。
映画『イミテーションゲーム』は、戦時下のイギリスでのコンピュータの意外な誕生、そして悲劇の天才の苦悩を描いている(NETFLIXで見れます)。

あらすじ

第二次世界大戦でナチスドイツ軍の使用した最強の暗号、エニグマ。
広大なヨーロッパの戦場で暗号は大変な役割を果たし、ドイツ軍は連勝していた。
若き天才数学研究者アラン・チューリングは暗号解読のためにイギリス政府に雇われる。

天才も、社会性からは自由ではない

エニグマ解読の業績のドキュメンタリー映画というより、天才アラン・チューリングの悲劇と、彼の業績を再評価するための映画といえる。
エニグマの仕組み、解読手法については一切解説されず、ひらめいたシーンもどういうことかわかりにくい。
そこらへんはほかの映画や書籍に譲り、彼の個人史に注意を向けるべきなのかもしれない。

その後の60年を全く変え、これからの未来も全く異なったものにするであろうコンピュータ開発の父…偉大な功績を残しながら、最終的に彼は自殺してしまう。
偉大な天才すらも社会性から自由にはなれない、ということをこの映画を伝えていると思う。
(以下は映画から読み取れる部分だけの根拠である。)

小学生?時の描写から見る当時の人物像とその影響

まず小学生時?の2つの描写から、チューリングはいじめを受けていたことがわかる。
いじめを受けるのに理由など存在しないことも多々あり国によってもその理由は違うものだと思うが、まず彼は当時から変わり者で、それが理由の一つだったようだ。
仲がよく、同性愛にも目覚めていたほど仲のよい友人はいて、助けてくれたこともあるようだが、そのほかには友達はほとんどいなかったようだ。

そしてその後最愛の友人が亡くなり、小学生?時点では理解者はいなくなった。
生前友人が示唆してくれた暗号への道を、極めることになる。

周囲からあまり評価されず、自己評価も低い

人間は他者を通じて自分を確認するという。
周囲の人間がみんな知らないと言えば、自分が誰かわからなくなる。

自己評価も同じだ。程度の違いはあるにせよ、他者を通じた評価によって自分の価値を決めることができる。
チューリングはあまり評価されなかったため、自己評価もあまりなかったように見える。

・研究を理解せず結果だけ求める強権的な上司。
フィクション(例えばシャーロック・ホームズ)ではたいてい天才キャラにはパトロンというか、絶対的な信頼をおく大物がいたり、そもそも上司がいないことが多いが、それは組織だとクビになるからだ。

・うまく理解してもらえない同僚。
元々のチューリングのコミュニケーションの下手くそさも手伝って、うまく理解してもらえていなかった。
天才的能力を認め徐々に信頼は生まれていったが、理解とは異なるものだったように思う。
また、スパイが紛れこんでいながらもそのままにする、という上司の方針も苦悩を生むことになった。

・チューリングの家族は一切出てこないが、採用テスト時の説明によると家族にも説明できない極秘の仕事だったため、家族に認めてもらうこともできなかっただろう。
よって彼を本当に理解できる人間は仕事関係に限られることになるのだが、上述の通りあまりうまくいっていないように見える。

・恋人ジョーン・クラークとは理解し理解され理想的な関係にあり婚約関係までいったが、結局別れることになった。
その後も友人として親密な関係は続いたが、彼の心を支えることはできなかった。

・チューリングにとって暗号解読が誇りだということをあまり感じない。
他人に認められなくても、自分が誇りだと思えば、戦争の被害を減らしたと考えれば自殺にまで至ることはない気もする。
チューリングは、死別した友人、に一番認めてもらいたかったのかもしれない。

同性愛への政府・国民の重い処罰

身を守り生きる気力を与えるのは親しい人間関係と評価だとすれば、攻撃してくるのは社会、世間だ。
現代、マスコミの被害で精神病になるというのは珍しくもないが、当時でもそうだっただろう。
今以上だったかもしれない。

・当時のイギリスでは同性愛は犯罪で忌み嫌われ、ホルモン投与で矯正されることが公的に許されるほどだった。

・業績が表に出ていなかったため、世間からの評価が厳しかった

・政府内ですら、理解してくれる人は少なかった。
政府内でも極秘で、結果的に戦争は終わったのだし、当時ではその凄さは理解できないものだった。

以上のように、偉大な業績と能力を持つ天才でも社会性を無視できないことがわかる。
いや、むしろ社交性を克服するために、欠落したものが才能となって現れる側面もあるかもしれない。

天才は膨大なサラリーと尊敬と知名度を得、奇行が知られることもあるが、彼らですら社会から自由ではない。
まして才能も実績も金も誇りもない一般人は、社会に簡単に抹殺されることを、覚えておかないといけない…。

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