今までに読んだ、村上龍が著した書籍作品を、暫定的に7つに分類した。
※小説に限って言えば、4つに分類できる。
まだ完成度は半分くらい、最終的に全作品を網羅する予定。
変態を観察した作品群
金を持っている男の変態と、買われる女を描く。
基本的にメンタルヘルス、変態特にSM、が頻出する。
淡々と行動、生態を描写し、主張は他のジャンルの作品と比較して明確ではないことが多い。
短編が多い。
2days 4girls
オビかなんかに書いてあったのは”2日間で4人を抱く方法”―的なやつだったが、そういうのではない気がする。
経済的自由が実現する、倫理から解き放たれたスノッブな世界で、他人に関与する方法を探る。
語り手は共通しているが、4人の女同士に関係性はない。
ワイン一杯だけの真実
一本ウン十万円の高級ワインの飲レポ、何万何千文字と文字を費やした超豪華な飲レポで、それぞれ男女の物語にしてこういうシチュエーションに合う、象徴する味だよね、と表現する作品。
トパーズ
12人の嬢や体を売る女たちの生態を描いた作品。
どう意味を見出すかは、突き放していて、??となった。
社会変化を起こし&翻弄される個人を描いた作品群
基本的に日本社会で、大きく社会が動いたり、動いた後だったりする作品群。
明確な主張、膨大な資料に支えられた科学的ディティール、社会批判…を含んでいて、長編が多く、読み応えがある。
5分後の世界
太平洋戦争で降伏せず、戦争を続ける5分後の日本(パラレルワールド)に迷いこんだ男が語り手の小説。
時間的密度の高い戦闘シーンが圧倒的ボリュームで淡々と描かれる異様な迫力、現代日本とは真逆の社会を描くことによる痛烈な社会批判…が至高の、傑作。
ヒュウガ・ウイルス
『5分後の世界』と共通した世界観で、語り手は5分後の世界のCNNの記者。
戦闘描写の迫力は健在、語り手が同じ世界の人なので社会批判は薄くなり、脳科学要素が濃くなる。
なぜ脳科学の科学的緻密描写をぶち込んだ?と最初は思うが、理由がある、裏切られることは絶対にない。
希望の国のエクソダス
経済が停滞し閉塞感が極地に達した日本で、引き込もり中学生が蜂起し、独自の経済圏を構築する物語、経済要素が強い。
このときの専門家への取材からメールマガジンJMMへつながるという。
オールド・テロリスト
経済的、人脈的に力を持った老人が団結し、テロを起こし社会を変えようとする物語。
『希望の国のエクソダス』の何年後かの世界で、登場した中年記者「セキグチ」が語り手となる。
中学生が蜂起したり、老人がテロリスト集団になったり、この世界の日本は大変だが、希望もある。
愛と幻想のファシズム
独裁者トウジ・結社「狩猟社」が台頭し、支持を集め、日本社会を変え、救いになっていく小説。
政治経済要素が強い一方、矛盾に悩む個人の内面の変化も描いている。
半島を出よ
北朝鮮の特殊部隊が福岡市を占領する話。
特殊部隊兵士、日本の高級官僚、福岡市役所職員、不良青年…と語り手をそれぞれ変えて出来事をリアルタイムに伝える。
語り手が様々で多いが、それぞれディティールが細かく、リアリティがある、舞台となる福岡市ではなんと本物の地名や建物名を使っている…巻末の参考文献はとんでもない量、取材量は相当なものだったようで、納得する…。
北朝鮮将校の巧妙な統治、住民の温度、中央政府と地方の関係、国防体制、聖地、専門に特化した少年達、と見どころは多い名作。福岡市民は特に読むべき。
歌うクジラ
不老不死の方法が発見され、さらに極度の階級社会が進行した22世紀の日本。
現代の日本の面影はほとんどなく、退廃が進んだディストピア。
歳月と階級社会の進行によって日本語が場所や集団によって変化していて、特に敬語は非常にレアで重宝される、そんな社会で敬語を使う出島出身の少年が語り手となって秘密のデータを要人に届ける、という小説。
海の向こうで戦争が始まる
海辺の対岸の都市で戦争が起きている様をいくつかの視点で描く。
日本というわけではないが、戦争という社会の現象を描いているのでこのジャンルにした。
個人的内面変化を描いた作品群
犯罪や出会いなどのイベントによって個人の内面が変化する様子を描いたジャンル。
オーディション
再婚相手にオーディションを行ったところ、一人の女が強い印象に残る。
周囲の評価とは逆に、彼女に夢中になっていく―ホラー作品。
コインロッカー・ベイビーズ
生き残ったコインロッカーベイビーである少年たちが、その強い生命力を発揮していく様子を描く。
共生虫
引き込もりの少年がインターネットに接し、妄想に囚われながらも外に出る意味を見つけ、生きがいと力を発見していく作品。
本物の引き込もりなので、会話が数えるほどしかない。
共生虫ドットコムとして作中のサイトが再現されていたりもしたが、現在は閉鎖している、書籍として『寄生虫ドットコム』にすべて記録されている。
ストレンジ・デイズ
完璧な演技力を持つ深夜トラックドライバーの女と出会い、彼女をプロデュースしようとする中年男が語り手となる。
彼女と接する中で、見えなかった様々なことに気づき、驚き、悩み、それでも前に進んでいく。
ピアッシング
不満は一切ない妻、子供、好きな仕事…男に不満は一切ないように見えるが、まだ幼い我が子の体をアイスピックで貫きたいという衝動に苦しんでいた。衝動を解消するためにはどうすればいいか―たいていの追ってくるものは逃げてもむしろ大きくなっていく、向き合うことが必要である―男は家族を守るため誰か他人を、アイスピックで貫くことを決意する。
ライン
語り手が、しりとり、鬼ごっこのように?、接した人間でどんどん変わっていく、変わった小説。過去のトラウマが現在に与える影響、がテーマ?
謎の明るさ群
上のどの小説にも当てはまらない、謎の明るさとコミカルさを持った作品群。
昭和歌謡大全集
暗く社交性ゼロ未来ゼロなオタクグループと、ミドリという名前の普通のおばさんで構成されたミドリ会のエスカレートしていく抗争を描く。
抗争といっても色々あるがこの作品では殺し合い。
どちらのグループも普通の人間たちで突拍子もないが、妙に具体的で科学的。
次第に目的が明確化し組織化していく―明確な目的を持った組織や個人は強く美しいということを雄弁に主張する。
だいじょうぶマイ・フレンド
突如空から降ってきた、すさまじい力を持つ異星人との付き合いを描いた作品。ロボット人間にしてしまうディストピアっぽいものが垣間見えるが、一貫して明るい雰囲気。
超電導ナイトクラブ
先端技術の専門家たちが集うクラブ「超電導ナイトクラブ」で起こる様々な出来事を描いた作品。
科学を信奉する彼らは倫理観ゼロで解釈し、具体的に問題を解決するための知識もある、例えば人造人間の製造などでも実行する。
なんでも実行する知識・技術と経済力と、科学・哲学・社会・変態についてなんでも話せる話し相手を持つ彼らに暗さはなく、ひたすら明るい。
エッセイ集
様々な雑誌にエッセイを寄稿し、同時にいくつも連載も持っていて文章製造マシーンと自称していたときもあった。
読めばエッセイと明らかにわかるが、題名からエッセイ集とわかりにくいところがあるので、一応書いておく。
69 sixty nine
村上龍が人生で最も楽しくスリリングだったという1969年の高校時代のバリケード封鎖を描いた作品。
エッセイではなく小説だが、自伝であることや、ほかの作品と感じが違うのでエッセイに分類した。
現在の高校生とは全く違う、エネルギーがすごい。
逃げる中高年、欲望のない若者たち
若者論が多い。
誰にでもできる恋愛
女性誌の連載エッセイをまとめたもの。
タイトルは、誰にでもできる恋愛というものは多様化、経済的にもはや存在しない、という意味。
櫻の樹の下には瓦礫が埋まっている。
東日本大震災後のエッセイ集。
だまされないために、わたしは経済を学んだ
村上が主催するメールマガジンJMMの1999年3月〜2000年12月分をまとめ、加筆修正したもの。
賢者は幸福ではなく、信頼を選ぶ
男性ファッション誌上での連載エッセイをまとめたもの。
平易で挿絵の多い絵本作品群
『13歳のハローワーク』に代表される、各種情報を子供にもわかりやすく伝えるという目的の元に作られた本。
はまのゆか氏の暖かみのあるタッチの挿絵、平易な表現が特徴的。
おじいさんは山へ金儲けに
投資の概念と基本的知識を、昔話を現代風にアレンジして伝える作品。
…のはずだが、異様な展開と文章が面白く教訓が全く頭に入ってこない…。
あの金で何が買えたか
バブル崩壊で各金融機関に注入された額を、それぞれ買えたものに変換し、その額を感覚で理解する、という趣旨の本。
例えに出すのは有名企業の買収であったり、国際貢献的なものだったり、さまざま。
対談記録群
さまざまな専門家との対談、インタビューを記録した作品。
小説の取材や、「カンブリア宮殿」で数多くインタビューしているだけあって、手慣れた印象がある。
人生における成功者の定義と条件
成功者の定義とは何か、各領域の一流人物にインタビューした作品。だいたい同じところに収束している、自分の好きなことをやる―。
共生虫ドットコム
『共生虫』に登場するサイトを再現したファンサイト「共生虫ドットコム」での全記録+ガス兵器の専門家などへのインタビューを収録した作品。
当時のサイトをそのまま記録したCDも付属、既に共生虫ドットコムは閉鎖しているので貴重な資料になる。